田中康夫の新ニッポン論

18/5月号 田中康夫の新ニッポン論58「ニッポン凄いゾ論の終焉」◆月刊VERDAD-ベルダ

18/5月号 田中康夫の新ニッポン論58「ニッポン凄いゾ論の終焉」

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「見ざる・聞かざる・言わざる」ならぬ「見ざる・聞かざる・ディスりまくり猿」な面々が都合5年4ヶ月余にも亘って唱和し続けた「嫌中・嫌韓・嫌朝」の「ニッポン凄いゾ論」が、終焉を迎えようとしています。と申し上げるや、地球儀俯瞰外交が地球儀“傍観”外交に転じた冷厳な現実すら認められぬ彼らや彼女らは、口角泡を飛ばして反駁するでしょう。

或いは内心、少なからず疑心暗鬼が生じているかも知れません。であればこそ、その不安を振り払うべく、虚勢を張り続けているのかも知れません。とまれ、「弁証法」を弁(わきま)えぬ可哀相な人々です。

ドワイト・D・アイゼンハワー大統領時代に国務長官を務めたジョン・フォスター・ダレスは、「日米安全保障条約の産みの親」として、日本では好意的に捉えられています。が、その彼は、“名誉白人”としての日本人を看破していた老獪(ろうかい)な人物でした。

「日本人のレイシズム=人種差別主義、言い換えれば欧米への劣等感。他方でアジアに於ける近代人は自分たちのみで、中国人や朝鮮人、更にロシア人よりも優越していると自惚れる日本人」

「その相反する屈折した感情=アンビヴァレンスを巧妙に利用せよ。日本国民は、我々白色人種に従属する一方、アジアの黄色人種の中で孤立し続ける」

山東省で生まれ、遼寧省(りょうねい)の東北大学工学部で学んだ後、国費留学生として北海道大学大学院工学研究科で博士号を取得、ソフトブレーンを起業した畏友・宋文洲氏は昨秋、以下の論考をメールマガジンで記しました。

「中国共産党の党員は約9千万人・・・日本の有権者数とほぼ同じ・・・全国に組織を持ち、選挙を通じて代表を選び、5年に一度北京に集まり、党大会を開催・・・こんなに巨大且つ強力な組織はなかなか世界に存在しません」

「中国人は国のトップを選ぶ選挙がないから・・・可哀相だと思う日本人も多いが・・・(国営マスコミが報道しなくともSNSが普及する前から)中国人の多くは党内政治の様子を知っており、利益闘争から路線闘争までの情報を共有し、独自の方法でそれぞれへの支持と反対に加担する・・・共産党も調査機関を通じて国民の動向をよく知っている・・・政権のまずい政策が続くと国民の不満が言論からデモや暴動に発展していくので党内の反対派が自然にそれを利用して力を増していくのです」

「中国の一党独裁体制も既に70年近く続き・・・優秀な人材は殆ど共産党体制内部に集まり・・・国の方向から、代表する地域の利益まで相違がぶつかり合いながら最終的に政策に収束していく・・・バランスと妥協のプロセスであり、民主主義のプロセスでもある」

「党内闘争も優秀な人材同士の戦い・・・想像を絶し・・・建国の父である毛沢東が死んだ途端、奥さんが逮捕・・・どれほど党内の力が複雑且(か)つ強力かは判ります」

「文化大革命や天安門事件などの失敗と挫折があっても中国という巨大な史上最大の国家を100年の没落からもう一度繁栄の軌道に乗せたのは事実です」

「20年後のことを予想できる人はいません。40年前、ソ連崩壊を予想しましたか? 20年前、中国が再び世界一位のGDPを生み出すと予想できましたか?2千年にも亘って日本が中国の体制を学んできた歴史にそれだけの理由はあったに違いありません」

「今日のタイトル『日本がまた中国の政治体制を学ぶ日』を嗤(わら)って済ませるのでなく、今の日本政治を考察するヒントになれば」と締め括る宋氏。

エドワード・サイードの足元にも及ばぬ小生の20年以上前の造語。「肉体は黄色人種なれど精神は白色人種」を演じる“黄色いバナナ”を想起しました。

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参考資料

「憂国呆談」6月号
https://tanakayasuo.me/archives/22502

Vol.285『嫌韓・嫌中・嫌朝の香ばしい「赤いアベノミズム」な皆さまに告ぐ! 畏友・宋文洲さんが語る「赤いチャイナ」の智恵!』

https://tanakayasuo.me/youtube#Vol285

文字起こし
http://nippon2014be.hatenadiary.jp/entry/2018/04/28/093520

宋文洲メルマガ
「私が中国共産党をどう思うか」
http://www.softbrain.co.jp/mailmaga/detail/post_43.html
http://www.soubunshu.com/article/454421559.html

「日本がまた中国の政治体制を学ぶ日」
http://www.softbrain.co.jp/mailmaga/detail/30131047050204020gdp2_httpwwwsoubunshucomarticle453797273html_twitterhttptwittercomsohbunshuhttpwwws.html
http://www.soubunshu.com/article/453797273.html

ジョン・フォスター・ダレスの看破

決断のフリップ

「田中康夫の新ニッポン論」57「承詔必謹」 「VERDAD」4月号

18/4月号 田中康夫の新ニッポン論57「承詔必謹」◆月刊VERDAD-ベルダ

関連する「モーニングCROSS」文字起こし、「だから、言わんこっちゃない!」動画&文字起こしにリンクしています。

2018年4月30日 TOKYO MX モーニングCROSS 田中康夫『“都民ファやらせ質問疑惑”保存者名が「ecoyuri」・「働き方改革」渡辺ミッチーの至言に拳拳服膺を・アルゴリズムな「意識高い系」が唱えた、「ニッポン凄いゾ論」の終焉。時代は演繹法から帰納法へ!』
http://nippon2014be.hatenadiary.jp/entry/2018/04/30/092039

文字起こし2018年3月30日 TOKYO MX 「モーニングCROSS」 田中康夫十七条憲法第三条が謳う「承詔必謹・しょうしょうひっきん」大日本帝国憲法➡敗戦➡現在❣ 三度に亘る牽強付会な解釈変更の悲劇  http://nippon2014be.hatenadiary.jp/entry/2018/03/31/094714

動画&文字起こし 田中康夫の「だから、言わんこっちゃない!」Vol.260『安倍さんを苦しめるエセ「保守」マンセー諸君Part1 贔屓の引き倒しな「承詔必謹」を改めよ!』
http://nippon2014be.hatenadiary.jp/entry/2018/04/04/184644

動画&文字起こし
田中康夫の「だから、言わんこっちゃない!」Vol.243『チンパンジーこそ判る「だから、言わんこっちゃない!」朝鮮半島』
http://nippon2014be.hatenadiary.jp/entry/2018/03/15/035918

赤い安倍晋三―「民主主義」はネズミを捕る/清義明 筑摩書房
http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1268/

赤い安倍晋三 -「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか 清義明
http://blogos.com/article/164464/

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