田中康夫の新ニッポン論

19/2月号 田中康夫の新ニッポン論67「ノブレス・オブリージュ」◆月刊VERDAD-ベルダ

19/2月号 田中康夫の新ニッポン論67「ノブレス・オブリージュ」

1999年3月、メインバンクの日本興業銀行と監督官庁の通商産業省も見放し、
負債総額2兆5000億円と破綻寸前の日産自動車(株)を立て直すべく、
塙義一(はなわ・よしかず)社長はルノーS.A.との提携を決断。
7000億円の資本参加に応じた同社から、カルロス・ゴーン氏を始めとするフランス人重役3人を迎えた。
嘗て商工省が存在した銀座木挽町(こびきちょう)の日産本社ビルで、
信州・長野県知事就任前年の1999年7月、ロングインタヴューを行った塙社長の哲学と覚悟を、
「日産インパール作戦」の最中に改めて想起する拙稿「ノブレス・オブリージュ」。

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「今年3月27日、日産自動車株式会社・塙義一(はなわ・よしかず)社長は、負債総額2兆5000億円に達した経営を立て直す為、ルノーS.A.との提携を決断。7000億円の資本参加と共に、カルロス・ゴーン氏を始めとするフランス人重役3人を迎えた。日産は、どこへ行こうとするのか? 改革のさなかの日産社長に田中康夫がインタヴューした」。

満州で跋扈(ばっこ)した久原房之助(くはら・ふさのすけ)と鮎川義介(あゆかわ・よしすけ)の「国策会社」日本産業が前身の企業を、メインバンクの日本興業銀行も通商産業省も見放し、「日産、ルノー傘下へ」と資本提携翌日の朝刊が大見出しを打った4ヶ月後、『カーグラフィック』の兄弟誌だった『NAVI』1999年10月号に6ページ寄稿すべく僕は、嘗て商工省が存在した銀座木挽町(こびきちょう)の本社ビルを訪れました。(https://tanakayasuo.me/heisei で閲覧可能)

「基本的にルノーと提携して一番よかったと思うのは両方とも同じぐらいのサイズ、似たような歴史を持った会社ですから、両社とも両立出来るかなと。ちょっと手を繋ぐだけではなくて、かなり深い関係にはなるんだけど、両社ともインディペンデントで、ルノーはルノー・ブランドを、日産は日産ブランドを維持しようと。摺(す)り合わせとかいうことではなくて、それでいて恰(あたか)も一社のような組織にしようと。そういう関係をルイ・シュヴァイツァー会長も望んでいました」。

星霜(せいそう)を経て昨年11月19日、在日フランス商工会議所創立100周年記念式典で、現在は名誉会長のシュヴァイツァー氏と、3代目CEOを塙、ゴーンの両氏に続いて務める西川廣人(さいかわ・ひろと)代表取締役が、基調講演を行います。題して「フランスと日本 共に未来を創る」。東京国際空港に到着したビジネスジェット機に東京地方検察庁特捜部の検察官が乗り込んだのは、その約7時間後です。

戦略も戦術も欠落した「平成の真珠湾奇襲」だと直感した僕は、更に約6時間後、広報担当や法務担当の役員も弁護士も帯同せずに85分間、頭を下げる素振りすら見せず「強い憤りと落胆」「ゴーン統治の負の側面」を捲(まく)し立て、「本日は有り難う御座いました」と締め括って「泥沼のインパール作戦」へと突入するライブ映像で確信しました。「契約」という概念も「ノブレス・オブリージュ」の覚悟も理解し得ぬ御仁(ごじん)が日産自動車CEOの座に就いていたのだと。

1ヶ月後の12月19日「ザ・フィナンシャル・タイムズ」が「日産、日仏企業連合、ルノーを危機的状況に陥(おとしい)れた人物がCEOを続けるシナリオは想像出来ない」と、更に1ヶ月後の1月24日に「日本経済新聞」が、「(彼が)信任に値するかは日産という企業の統治の根幹に関わる」と喝破(かんぱ)しました。

“白羽の矢”を立てられて着任したカルロス・ゴーン氏は、その前年に塙氏が掲げた、プラットフォームの集約、車種の削減、販売店網の再編、資産売却で有利子負債圧縮、総コストの4000億円削減等の「グローバル事業革新策」に基づく「日産リバイバルプラン」を敢行します。「日産自動車は日産車を愛し働き選ぶ人々のものなのだ」と着任当初に繰り返し説いた彼の「変節」を逮捕後になって声高に糾弾し始めた“ゴーン・チルドレンズ”筆頭格たる残る1人の代表取締役(あけち・みつひで)の年間報酬は、豊田章男(とよだ・あきお)氏より高額の5億円。

「7人に1人の日産マンの人生を一変させてしまった」自分には畏れ多いと2003年に引退後、叙勲も褒章も辞退され、まさしくノブレス・オブリージュな人生を3年前に全うされた塙氏は、国内販売シェアがトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次いで5位。営業利益率に至っては7位に甘んずる「グローバル企業」の惨状に、泉下(せんか)で慨嘆(がいたん)されているでしょう。

田中康夫、塙義一・日産社長に会いに行く「NAVI」1999年10月号
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「不毛なニッポンの宿痾」まとめサイト
https://tanakayasuo.me/heisei
「サンデー毎日」寄稿『平成風景論「法治国家」ニッポンの宿痾』
を始めとする原稿をお読み頂けます。

「憂国呆談」2月号
https://tanakayasuo.me/archives/24052
自由学園のデザインから、閉校した文化学院、
カルロス・ゴーン取締役の解任、水道の民営化まで。

・連載バックナンバー>>>こちら
・VERDAD HP>>>こちら

月刊「VERDAD」についてのご紹介は>>>こちら

参考資料

「不毛なニッポンの宿痾」まとめサイト

日産「インパール作戦」、
「全ては金目」JOC、
「奇蹟の手形」日朝平壌宣言、
「停滞から後退へ」北方領土、
不毛な沖縄「住民投票」etc.。
「宣言」と「契約」の「意味」を説く「平成風景論」

https://tanakayasuo.me/wp-content/uploads/2019/01/b31e8838b46c44b20a785e42f82dcb19.pdf

19/1月号 田中康夫の新ニッポン論66「フルネーム バイネーム」◆月刊VERDAD-ベルダ

19/2月号 憂国呆談 season2 volume103◆ソトコト

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