18/3月号 田中康夫の新ニッポン論56「社会的共通資本」◆月刊VERDAD-ベルダ

18/3月号 田中康夫の新ニッポン論56「社会的共通資本」
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地方自治法で設置が義務付けられていた総合計画審議会を換骨奪胎すべく、宇沢弘文氏と巡り会ったのは2002年春。計画経済の如き数値目標を羅列した大本営発表の「総合計画」とは異なる、私たちが実現すべき社会のあり方を指し示す物語を纏める専門委員会の座長に就任頂きます。

大気・森林・河川・土壌等の自然環境。交通機関・情報基盤・上下水道等の社会基盤。教育・医療・金融等の制度資本。

「すべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」としての「社会的共通資本」を提唱していた宇沢氏は、2年の歳月を費やして『未来への提言~コモンズから始まる、信州ルネッサンス革命~』を執筆下さいました。

「世紀末」のダンテ・アリギエーリから紐解き、トマス・ペインの『コモンセンス』まで、自然環境・農村・都市・産業・教育・医療・福祉・地方分権・中央官僚制度からの「自律」・長寿型文明の十節で、「社会的共通資本とコモンズ」を詳述の“未来へ向けての叙事詩”です。

星霜を経て「コンセッションConcession」という“妖怪”が日本でも徘徊しています。と申し上げるや、表現が不穏当だ、指定管理者制度や公設民営事業も含まれるPPP=パブリック-プライベート・パートナーシップの中に位置付けられたPFI=パブリック-ファイナンス・イニシアティヴの一手法に過ぎぬコンセッションを過度に警戒しすぎだと、訓詁学者の如き御託を披瀝(ひれき)する向きが現れるでしょう。更には、公共インフラの運営権を数十年単位で外部に売却するものの土地や建物等は保有し続け、契約を通じて運営にも関与可能なコンセッションは、売却益で財政健全化も実現する“魔法の杖”なのだと。

呵々(かか)。ならば何故、19世紀の1860年からジェネラル・デゾー(現ヴェオリア)と、1985年の更改時からセーヌ川左岸はリヨネ-ズ・デゾー(現スエズ)と契約したパリ市が2010年、両社との委託契約を終了させ、浄水から給水、料金徴収の全てを再公営化したのでしょう? 老朽化した設備更新を理由に水道料金が高止まりする中、1977年から18年間に亘って市長を務めたジャック・シラク氏と両社の「関係」も問題視され、ステイクホルダーstakeholderで構成される円卓会議が財務の透明化と説明責任を担う再公営化が、皮肉にもウォーター・マフィアの符牒(ふちょう)で知られる両社が本社を構える地元自治体で敢行されたのです。

所有者・従事者・利用者の何れもが1人の「人間」として分け隔てなくサーヴィスを共有し得るのが社会的共通資本。運営会社へ対等に発言可能な航空会社が利用する空港と、か弱き市民が利用する水道が、同じ土俵でコンセッションの議論をなし得ぬ理由です。

国交省所管の下水道も農水省所管の農業集落排水も、敷設費用の8割を手厚く国庫補助。が、人口の多寡に関係なく配管等のスペックは同一。而(しか)も維持修繕費用は全額自治体負担。夕張市破綻の原因です。山あり谷あり集落が点在する南信州の下條村を、全国1718自治体で財政健全化率1位とした伊藤喜平前村長は集落毎に合併処理浄化槽を整備。下水道率ならぬウォシュレット使用可能な水洗化率は県内屈指98%。隣接の飯田市から子育て世代の転入が相次ぎます。

社会的共通資本とは、「この国のかたち」ならぬ「この国のあり方」を自問自答する作業。なのに、然(さ)したる議論も報道も行われずに来る4月1日には主要農作物種子法が廃止され、「国柄」たるコメすらモンサントの軍門に下る「暮らし方改革」に猪突猛進。4月馬鹿(エイプリル・フール)な似非保守ニッポンです。

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「怯まず・屈せず・逃げず」宇沢弘文さんとの想い出 「現代思想」2015年3月臨時増刊号「宇沢弘文 人間のための経済」
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