「天動説」川辺川ダムまとめサイト

1966年の計画発表から54年!
読売新聞、日本経済新聞も社説で疑問を呈する「川辺川ダム計画」は、
「前例踏襲」「既得権益」の牙城 建設省河川局改め国土交通省水管理・国土保全局が固執する
最後の亡霊と呼ぶべき巨大公共事業。
その亡霊の「流れに棹さす」日和見な蒲島郁夫熊本県知事は、計量政治学、政治過程論が専門の東京大学法学部名誉教授。
このまとめサイトでは、
諏訪湖に流れ込む下諏訪町の砥川でダムに拠らない治水を実現した「脱ダム」宣言のYa‘ssyが、
県知事・国会議員時代に3回訪れている球磨川水系のあるべき治水・利水のあり方を語っています。

以下の5つのまとめサイトもご参照下さい。

実は「脱ダム」へ転向していた国交省まとめサイト
https://tanakayasuo.me/mlit
水害は『脱ダム』のせいなのか!?田中康夫の実践的『治水・治山』原論
https://tanakayasuo.me/river
~ただ単にやめれば良いのでなく、新しい治水のあり方を示す~「脱ダム政策の哲学と実践」
https://tanakayasuo.me/dam
間違いだらけの日本の治水・治山まとめサイト
https://tanakayasuo.me/forest

11月27日(金)TOKYO MX「モーニングCROSS」で「川辺川ダムありきに固執する時代錯誤な国交省&熊本県」と題して
お話ししました。
11月30日(月)明け方までエムキャスで見逃し視聴が可能です。
https://mcas.jp/movie.html?id=749815351
・PCの場合はワン・クリックでアクセスします。
・スマホの場合は少々複雑(涙)
「アプリで再生」をクリック。「エムキャス」を開き、最下部の「タイムライン」をクリック。
「TOKYO MX1」27日(金)の欄に表示される「モーニングCROSS」バナーをクリック。
更に「モーニングCROSS 11/27 07:00 本編04」をクリックすると「到着」です。

「VERDAD」12月号「田中康夫の新ニッポン論」Vol.89

PDF>>>PDF

更に加筆した原稿はこちらをクリックすると全文が表示されます

「縦(よ)しんば、河川改修費用がダム建設より多額になろうとも、100年、200年先の我々の子孫に残す資産としての河川・湖沼の価値を重視したい。長期的な視点に立てば、日本の背骨に位置し、数多(あまた)の水源を擁する長野県に於いては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない」。

知事就任4ヶ月後の2001年2月20日に発した『「脱ダム」宣言』です。

「数百億円を投じて建設されるコンクリートのダムは、看過(かんか)し得ぬ負荷を地球環境へと与えてしまう。更には何(いずれ)れ造り替えねばならず、その間に夥(おびただ)しい分量の堆砂(たいさ)を此又(これまた)、数十億円を用いて処理する事態も生じる」と冒頭で記した件(くだん)の宣言は、「現行の下諏訪ダム計画を中止し、堤防の嵩上(かさあ)げや川底の浚渫(しゅんせつ)を組み合わせて対応」。「地権者に対しては、最大限の配慮」で「県独自に予定通り買収し、保全する」と明記の具体的政策でした。

諏訪湖へ流れ込む一級河川・砥川(とがわ)の支流、霧ヶ峰の八島ヶ原(やしまがはら)湿原が源流に位置する東俣川(ひがしまたがわ)で計画されていた下諏訪ダム。諏訪大社では太古から、上流に群生する樅(もみ)の大木を「式年造営御柱大祭(しきねんぞうえいみはしらたいさい)」に用いてきました。

宣言発表1ヶ月後の3月15日、日本テレビ系列テレビ信州は下諏訪町民800人に世論調査を実施。結果はダム賛成17・3%、ダム反対57・1%のトリプルスコア。

然(さ)れど情緒的に宣言したのではありません。本流の砥川でなく支流の東俣川にダムを建設する根拠を、旧建設省から出向中の土木部長に繰り返し尋ねても杳(よう)たる返答。後に僕が登用した県職員の土木部長は告解(こっかい)します。入庁後に配属された河川課での初仕事は、川幅の狭い“ダム建設に相応(ふさわ)しい”箇所を県全域地図に落とし込む作業でしたと。

我々が手足の爪を切るのと同様、「減災」の肝心要(かんじんかなめ)は維持修繕。重機を用いて1㎡1万円強で実施可能な河床整理と呼ばれる河道の浚渫こそ、地元の土木建設業者が胸を張って従事可能な地域密着型公共事業です。

財務省が「部・款・項・目・節(ぶ・かん・こう・もく・せつ)」と細分類する予算項目の、国土交通省の予算書には「浚渫」の表示自体が存在しません。国も自治体も浚渫予算を別立てせず、建設事務所の人件費等と「維持修繕費」の中に一括(ひとくく)り。護岸の補修、上流域の森林整備と並んで治水の基本にも拘らず、全国で浚渫が滞る理由です。

奇(く)しくも「脱ダム」に端を発する知事不信任決議案が賛成44人、反対5人、欠席11人で可決した2日後の2002年7月7日、僕は熊本県人吉市に隣接する球磨(くま)郡錦町(にしきまち)に赴きます。以前から依頼されていた町立体育館での「脱ダム」講演会。蒸し風呂状態の中、1800名もの聴衆は身じろぎもせず2時間、聴き入ってくれました。

国が事業主体でも総事業費の3割が自治体負担のダム建設は、中央のゼネコンに8割が還流する構図(スキーム)。地元土木建設業者が孫請け・ひ孫請けで貢献しようと、差し引き1割も地域経済は持ち出し。巨大公共事業の宿痾(しゅくあ)を説きました。

下諏訪ダム同様、本流の球磨川ではなく支流に計画する川辺川ダム。予定地の相良村(さがら)、ダム湖に沈む五木村、隣接する山江、球磨各村が当時、建設反対で歩調を合わせていたのは、皮肉にもダム建設に先駆け、代替道路建設や公共施設整備が粗方(あらかた)、竣工若しくは目処が付いていたから。因みにダム建設に先駆けての家屋移転用地補償を含め、国土交通省道路局、都市局、住宅局は蚊帳(かや)の外。全ては河川局改め水管理・国土保全局の「前例踏襲」な「既得権益」なのです。

とまれ、「脱ダム」宣言から20年。欧米と異なり、両肩から基礎まで鋼矢板を縦に2枚打ち込む護岸工法を未だに導入せず、浚渫も滞る日本の「天動説」治水行政。そろそろ“お零(こぼ)れ”を再び、と夢想して方針転換した球磨川流域自治体。それを押し止められぬ東京大学名誉教授(アームチェア・インテリ)の蒲島郁夫(かばしまいくお)県知事。嗚呼(ああ)、中央も地方も「前例打破」は見果てぬ夢です。

読売新聞11月25日社説
川辺川ダム容認 治水効果を十分検証すべきだ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20201124-OYT1T50269/
蒲島知事は大雨の時だけ水をためる「流水型ダム」で
ダムの下部に穴を開けておき、平時は水を流すことで環境への負荷を抑えるという。
流水型は大雨時に土砂や流木が穴を塞ぎ、流量を調整できない恐れがある
ダムが建設されても、それだけでは被害を防ぎきれない。

日本経済新聞11月19日社説
川辺川ダムは総合的検証を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66428640Z11C20A1SHF000/
拙速の印象が拭えない判断である。
著名な政治学者の知事には釈迦に説法だが、被災者の意識は時を経るにつれ移ろう。長期的に地域の持続に必要な対策を見極めるには、時間という要素も重要なのではないか。

毎日新聞11月20日社説
川辺川ダム建設容認 方針転換の根拠は十分か
https://mainichi.jp/articles/20201120/ddm/005/070/065000c

東京新聞11月21日社説
熊本の豪雨対策 ダム依存に回帰するな
https://www.tokyo-np.co.jp/article/69723

朝日新聞11月21日社説
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14703297.html?iref=pc_rensai_long_16_article

産経新聞11月21日主張
https://www.sankei.com/column/news/201121/clm2011210003-n1.html

「覆水盆に返らず」w信濃毎日新聞11月13日社説
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2020111300134

「脱ダム」宣言
http://yassy.system-a.org/hisyo/governor/declaration.htm
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/dam.htm

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