「ひとりひとりの若人が持つ能力を最大限に引き出し 技術者として社会人として 社会に貢献できる人材を養成する」。高邁(こうまい)な「建学の理念」を掲げる「加計学園」グループの岡山理科大学が今治市に計画する獣医学部を巡って、“甲論乙駁(こうろんおつばく)”状態が続いています。
今年5月段階でも入学定員や教員構成の再検討を求めていた文部科学省の大学設置・学校法人審議会は8月25日、既存の獣医学部では約4ヶ月間に及ぶ実習を僅か1ヶ月間でこなす“促成栽培”は、「次代を担う生命科学=ライフサイエンスの獣医師養成」の理念に悖(もと)ると指摘。認可判断の保留を決定しました。
評価額36億円の敷地を今治市が無償譲渡。同市と愛媛県が校舎・施設整備費として補助金96億円を拠出。国家戦略特区に於ける獣医学部新設の特例措置を内閣府が適用。“特例が過ぎる”と地元市民が前日24日に東京で会見。建設費水増し&補助金搾取「疑惑」の具体的裏付けとして設計図52枚をネット上でも公開しました。
「印象操作=フェイク」と抗弁するかと思いきや、校舎最上階の大ホールに併設「ワインセラー・ビールディスペンサーは・・・図面に記載が確認されましたが・・・関係各所からのご指摘、意見を頂戴し学園内で精査・・・現在の計画には入っておりません」と報道機関に加計学園はFAX。図面を認め、法外な坪単価「疑惑」も是認(ぜにん)する展開に。
広さ100畳を誇り、瀬戸内海を一望する校舎最上階の大ホール直下は、バイオセーフティレヴェル3=BSL3に該当の黄熱病、鳥インフルエンザ、SARS、HIV等の細菌・ヴィールス・病原体を扱う実験室。登録者以外は立入禁止の空間は大ホールの8分の1にも満たぬ12畳。「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究」を謳う学園の理念を疑います。
文科省が「挙証責任」を果たせず、内閣府に負けた段階で「議論終了」。52年振りの獣医学部新設こそドリルで「岩盤規制」に穴を開け、「歪められてきた行政を正す」歴史的な第一歩。と巧言(こうげん)を弄(ろう)する面々が「国家戦略特区ワーキンググループ」の周囲を徘徊。
彼らは「到来する成果」でなく「突破する過程」を「ゲーム理論」的に楽しんでいるだけなのでは? 訝しく感じていると畏兄・郷原信郎氏が「加計問題、『総理のご意向』を仕組んだ“真犯人”は誰か ~恐るべき18歳の推理」と題し、Tomoaki Kitaguchi名でFacebookに投稿された「加計問題の真相?(フィクションとしてお楽しみください)」をブログで紹介しているのに出合います。
『「スピード感を持って規制緩和する」という「総理の意向」を、それとなくボカして伝えるだけで、「加計学園で何としても獣医学部新設を実現する」とのメッセージとして解釈してくれる・・・交渉の過程で飛び出した「獣医学部の空白地帯に限る」や「一校・一地域に限る」といった後付けの条件は、「全国展開」を見据える特区WGとしては不本意なものだが、「加計ありき」で動いてくれている人々にそれを言っても仕方のないことだ。「1つの区域で規制改革が認められれば、他の区域でも認められる」という「特区ルール」を発動させることができれば、「事情が変わった」などと言い訳して、ちゃぶ台返しすれば良い。加計学園で実現すれば、後はどうとでもなる・・・向かうところ敵なし・・・規制緩和バンザイ!自由競争バンザイ!安倍首相バンザイ!」』。灘高等学校3年在学中の青年の深遠な推理に舌を巻きます。
問題は獣医師数の多寡でなく地域・職域の偏在の是正にも拘らず、更に現在120万人の18歳人口が20年後には3分の2の80万人へ激減するにも拘らず、本質を見極めて解決しようとしないニッポン。求められるべきは人倫(じんりん)です。