「田中康夫の新ニッポン論」Vol.138「和して同ぜず」
形骸化したG7(Group of Seven)の「会議は踊る」状態から、米中露印日5ヶ国のC5(Core Five)体制へと、世界の潮流は大転換!
「汚職腐敗国家」ウクライナと共に衰弱する欧州に見切りを付けたドナルド・トランプ政権が年次報告書「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」「非公開版」に記載した「核心的利益同盟C5(Core Five)」を、ワシントンD.C.のニュースメディア「Politico」と「Defense One」がスクープ。
それは、グローバルサウスを牽引する中露印と共に21世紀の「列強クラブ」を結成し、金蔓(かねづる)ATMとして「名誉白人」ニッポンにも参加を認める構想。
女性宰相「台湾有事」発言を巡って「浅慮浅薄」「快刀乱麻」と喧(かまびす)しい今こそ、「親日家」と目されているシンガポール初代首相リー・クワン・ユーが1999年上梓の回顧録『ザ・シンガポール・ストーリー』で述懐した「アジア人を見下す日本人」への忌憚なき諫言も紹介する「田中康夫の新ニッポン論」Vol.138「和して同ぜず」。
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「アメリカ合衆国政府は、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場を認める」。「アメリカ合衆国は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。この範囲内で、合衆国の人民は、台湾の人民と文化、商業その他の非公式な関係を維持する」。1979年元旦発効「アメリカ合衆国と中華人民共和国との間の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」は「曖昧(あいまい)」でなく「明確」そのもの。
2025年12月19日、国家安全保障問題担当大統領補佐官も兼任の対中強硬派と目されていたマルコ・ルビオ国務長官は「地政学上の重要な存在」が「世界第2位の経済大国(チャイナ)」で「日中の応酬は両国間で解決すべき問題」と言明。前稿Vol.137「戦略的現実主義」で言及のランド研究所国家安全保障研究部も「米中ライバル関係の安定化」論文で「台湾問題の安定化には統一に向けて北京が段階的アプローチを追求する最大限のインセンティヴ創出が肝要」と提言。女性宰相「台湾有事」発言を巡って「浅慮浅薄」「快刀乱麻」と喧(かまびす)しい島国は今や周回遅れ状態。
ワシントンD.C.のニュースメディア「Politico」「Defense One」は12月10日、ドナルド・トランプ政権「NSS国家安全保障戦略」の「非公開版」をスクープ。北米2・欧州4・名誉白人1「会議は踊るG7(グループ7)」に愛想を尽かしたドナルドは米中露印日「核心的利益同盟C5(コア5)」を「和して同ぜず」戦略(ディール)に基づき画策。用意周到に名誉白人「黄色いバナナ」ATM国家も末席へと加えて。
であればこそ今一度、客家(はっか)系華人4世のシンガポール初代首相リー・クワン・ユー李光耀が1999年上梓の「回顧録」で述懐の諫言を拳拳服膺すべき。
「日本人は、日本人より文明が低く民族的に劣ると見なしているアジア人と一緒に思われることを嫌っていた」。「天照大神の子孫で、選ばれた民族であり遅れた中国人やインド人、マレー人と自分は違うと考えていた」。
「我々に対しても征服者として君臨し、英国よりも残忍で常軌を逸し、悪意に満ちていることを示した。日本の占領の三年半、私は日本兵が人々を苦しめたり殴ったりするたびに、シンガポールが英国の保護下にあればよかったと思った」。「同じアジア人として我々は日本人に幻滅した」。
「戦争が終わって50年もたつのに、歴代の自民党政権政府は、そして主要政党の主だった指導者、学界、そして大半のメディアはこの悪魔の行いについて語ろうとしない」。「ドイツと違い、彼らは世代が過ぎていくことでこのような行いが忘れられ、彼らの行為の記述が埃をかぶった記録の中に埋もれさられてしまうことを願っている」。「これらの過去を隣人に対して認めないならば、人々はこうした恐怖が繰り返されることもありえると恐れるかもしれない」。
「分割統治(ディヴァイド&ルール)」インドで製造のアヘンを中国で売り捌いたイギリス。イスラエルへ武器輸出でガザのジェノサイドに加担する近時のドイツ。二枚舌な両国に負けず劣らず、大英帝国軍に代わって新加坡(シンガポール)を占領の大日本帝国軍が犯した数万人に達する「華人粛清事件」犠牲者を忘るべからずと。
とまれ、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相を筆頭にスロバキア、イタリア、ベルギーも「凍結ロシア資産」流用に反対する中、ヒラリー・クリントンとヴィクトリア・ヌーランド劣化版のウルズラ・フォン・デア・ライエンとカヤ・カッラスの女性コンビがウォロディミル「敗北確定(ウクライナ)」ゼレンスキーと猪突猛進な欧州の衰弱に見切りを付けた米国。
翻(ひるがえ)って1972年9月29日に「日中共同声明」で台湾に関して「米中共同コミュニケ」と同等の正文(せいぶん)、即ち「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府と承認する」。「日本国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と認(したた)めていた日出ずる国の「健忘症」は深刻です。
その「健忘症」を善男善女に向けて、2022年『VERDAD』4月号に「黄色いバナナ」と題して寄稿した「田中康夫の新ニッポン論」Vol.102から再録します。
「アングロ=サクソン民族のエリート正会員で在りたい強い願望を抱く日本国民。即ち欧米人への劣等感、亜細亜に於ける近代人は自分達のみで中国人、朝鮮人、露西亜人(ロシア人)よりも優越していると自負する両面価値観(アンビヴァレンス)を巧妙に利用せよ。然(さ)すれば連中は我々白色人種に従属し、黄色人種のアジアで孤立する」。
ドワイト・アイゼンハワー政権時代の国務長官で日米安全保障条約の産みの親として知られる反共の旗手ジョン・フォスター・ダレスの“妄言”です。
本来は、太平洋を挟んで向き合う米国と中国の“同時通訳国家”を目指すべきなのに、未だにアメリカ一本足打法を続ける非資源国ニッポン。嗚呼(ああ)、「黄色いバナナ」の「名誉白人」よ。
因(ちな)みに「黄色いバナナ」とは、ディズニーランドやマクドナルドに象徴される精神としての「ホワイト」に憧れながらも肉体は「イエロー」な敗戦後77年間の日本人を指す符牒(ふちょう)です。
前稿Vol.137「戦略的現実主義」、更にVol.102「黄色いバナナ」も併せてご笑覧下さい。
Vol.137「戦略的現実主義」
https://tanakayasuo.me/realism
Vol.102「黄色いバナナ」
https://tanakayasuo.me/archives/31913
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田中均×田中康夫の憂国対談「2022年 日本の自立像」まとめサイト
https://tanakayasuo.me/wtanaka
紛糾する「ウクライナ侵攻」 今こそ日本は国民益に基づく“バルカン外交”を 「サンデー毎日」田中康夫インタヴュー
https://tanakayasuo.me/archives/32013
Vol.103「従米一本足打法」
https://tanakayasuo.me/archives/32040
Vol.58「ニッポン凄いゾ論の終焉」
https://tanakayasuo.me/archives/22458
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バナーで使用した「列強クラブの仲間入り」風刺画を描いたジョルジュ・ビゴー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%93%E3%82%B4%E3%83%BC
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新たなロシア・中国・米国のネットワークがどのように機能するか Politico
https://www.politico.com/newsletters/national-security-daily/2025/12/10/how-a-new-russia-china-us-network-could-work-00685342
トランプ政権の古い関係を捨てて新しい関係を築く計画の概略
国家安全保障戦略の延長版 Defence One
https://www.defenseone.com/policy/2025/12/make-europe-great-again-and-more-longer-version-national-security-strategy/410038/
トランプ大統領はインドとの秘密のコア5超大国を計画しているのか?
India Today
https://www.indiatoday.in/world/story/india-modi-trump-core-5-superclub-russia-china-japan-g7-alternative-2834979-2025-12-12
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日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明 1972年9月29日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html
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日本李登輝友の会HPがアップする1978年と1972年の米中共同コミュニケ
アメリカ合衆国と中華人民共和国との間の外交関係樹立に関する共同コミュニケ
1978 年 12 月 15 日(1979 年 1 月 1 日発効)
http://www.ritouki.jp/wp-content/uploads/2015/01/1978relations.pdf
上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明) 1972 年 2 月 27 日
http://www.ritouki.jp/wp-content/uploads/2015/01/1972Shanghai.pdf
https://worldjpn.net/documents/texts/docs/19720228.D1J.html
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小倉和夫 台湾問題の原点、日中共同声明にあり
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c14052/