田中康夫の新ニッポン論

VERDAD「田中康夫の新ニッポン論」Vol.108「新しいケインズ」

路線バスも行き交う市道はセンターラインだけでなく、脇道との境目の横断歩道も白線が消えかかっている!

県道も含めて市内の道路を維持管理する横浜市の年間予算は3・9兆円!

これでは命を落とした81歳の仲本工事さんも、運転していた73歳の男性も浮かばれない。

「造るから治す、護る、そして創るへ。」の理念を信州・長野県知事時代から実践してきた「田中康夫の新ニッポン論」「新しいケインズ」。

✽✽横断歩道やセンターラインの白線を敷くのは警察の権限ではないか、というご質問を頂きましたので補足します。
横断歩道の設置場所等を決めるのは、当該警察本部を管理する行政委員会としての都道府県の公安委員会ですが、
その維持修繕を行うのは道路管理者の各自治体です。予算も各自治体が計上し、国からの補助金はゼロ円です。
ちなみに政令指定都市に於いては、市道だけでなく全ての道府県道も、さらには国から維持管理を移管されている一部の国道も含めて、
維持管理責任者は政令指定都市の首長です。

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「事故現場の市道はセンターラインだけでなく手前の横断歩道も白線が消えかかっている。市内の道路を県道も含めて維持管理する全国最大の政令指定都市・横浜市の年間予算は3・9兆円。これでは事故に遭った81歳の仲本工事さんも運転していた73歳の男性も浮かばれない」。

路線バスが通過する市道の中央線(センターライン)も、脇道との境目の横断歩道も、安全や命に繋がる白線が「消えかかっている」どころか「ほぼ消えている」のが一目瞭然な現場の動画を付けてツイートしました。

都道府県道・市区町村道の建設時には費用の7割を国が負担します。他方で、車両用防護柵(ガードレール)の設置費用や道路の区画線、舗装等の維持修繕費は全額、道路管理者たる地元自治体の負担。「財政難」を理由に点検は滞り勝ちです。

ツイート末尾には惹句「造るから治す、護る、そして創るへ。」を添えました。自前で機械を揃え、住民を雇う、実績ある地元の会社が応札可能な一般競争入札を導入した知事時代からの持論です。

敷設時には国が8割負担する下水道事業も維持管理費は全額地元負担。而(しか)も都会と同じ規格の管路。夕張市破綻の一因でした。

東京に本社を構える大手企業の支店が元請けだった舗道維持も下水道管理も、中抜きを排した地域密着型B2B入札制度へ改めると、落札率は往時の八掛けに変化。採算割れとは対極の、地元業者が胸を張って潤う公共事業改革。

而(しか)して2割分の余剰金は国からの補助金に非ず。使途自由な自治体の単独費。維持修繕箇所を増やすと共に、県内の小学校全学年に30人学級を全国で最初に導入する原資にも充てました。

就任した2000年10月、長野県は実質公債費比率が全国47都道府県でワースト1位と財政再建団体転落寸前でした。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を全国で唯一、在任6年連続で黒字化し、1日の利息の返済額だけでも1億4812万円に達していた債務残高も計923億円、47都道府県で唯一減少させ、他方で「人が人のお世話をして初めて成り立つ21世紀型の労働集約型産業」と呼ぶべき「福祉・教育・医療・観光・環境」の分野に傾注投資し得たのは、一連の入札制度改革を敢行したから。年率5%を超える実質経済成長率を最終年に達成しました。

閑話休題。2009年9月の「政権交代」後、前政権下で成立の補正予算14・7兆円を「事業仕分け」で3兆円削減すると息巻く民主党に対し、亀井静香氏の国民新党と統一会派を組んだ新党日本は以下の具体的提案を行います。

“景気の二番底”に対処すべく1兆円ずつ3項目、3兆円分の予算組み替えを行うべしと。

維持管理が滞って橋梁が落下し隧道が崩壊する米国の悲劇から学び、橋梁と隧道の緊急点検を全国津々浦々で年末迄に実施。地域密着型の公共事業として安心・安全・活力を齎(もたら)すべく、耐久性・耐震性が劣る箇所は前倒しで年度内に工事を開始。

労働環境が劣悪な福祉現場の待遇を改善すべく、時給30円アップを年初から実施。国・都道府県・基礎自治体が3分の1ずつ負担する福祉予算の地方負担分は3月に一括交付税措置すると約束。

総人口の18%に上る、山あり谷ありな中山間地域に暮らす750万世帯の汚水処理未整備地区への下水道敷設費用は47兆円なるも、環境省が所管する合併処理浄化槽の個別地域設置で水洗(ウォッシュレット)化したなら僅か6兆円。現行2兆円の下水道新設予算の3年分で完遂。

景気とは優れて“気分”という空気。「コンクリートから人へ」と情念的・情緒的な御題目を復唱するだけでは国民は疑心暗鬼に陥りますと諫言(かんげん)。が、哀しい哉(かな)、アルゴリズムな優等生集団には馬の耳に念仏でした。嗚呼(ああ)。

 

皆さまのNHKが報じた事故現場の動画
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221018/k10013862891000.html

動画付きの小生のツイート
https://twitter.com/loveyassy/status/1582864024957464576
https://twitter.com/loveyassy/status/1582865387783221249

小生のツイートを引用した東京スポーツ記事「東スポWEB」
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/242456
https://news.yahoo.co.jp/articles/d2d345997992d1d204beb68e497804df2e2179a0

 

参考資料

「田中康夫の新ニッポン論」Vol.110「正しいハイエク・新しいケインズ」
https://tanakayasuo.me/fairness

「新しい資本主義」のあり方を語った浅田彰氏との「憂国呆談」 「ソトコト」2022年1月号
https://tanakayasuo.me/archives/31133

建築家で東京大学名誉教授の難波和彦氏が「新建築」2004年8月号に掲載された建築家の團紀彦氏と小生の対談を論評した文章
http://www.kai-workshop.com/archives/034.html

長野県知事・田中康夫と建築家・團紀彦へのインタビューをまとめた「新建築」2004年8月号 特別記事「マスターアーキテクトに託されたこと」も興味深い。長野県では田中康夫知事が、景観上とくに重要と認められる地域にマスターアーキテクトを配属し、景観を育成するという制度を制定している。田中知事は軽井沢と飯田を指定し、團紀彦をマスターアーキテクトに任命した。建築の社会性に関する田中知事の発言には、民主主義や「公」の考え方に関して通常とは異なるユニークな視点がある。「建築というものはきわめて社会性が求められます。社会性が求められているときはby nameで誰かが提示しない限り、そこから議論が始まりません。」「民主主義の成果をもたらすためには、by nameで仕事をする人間を私が指名して起用しなくては、皆の意見は出てきません。」このように社会性は固有名にもとづくという発想には否定しがたい説得力がある。指名された建築家の責任は大きいが、自立する個人を根拠とした職能としての建築家にとっては冥利に尽きる使命だろう。田中知事の次の発言に、僕はハタと膝を打った。「私が長野で行おうとしていることはケインズの新しいニューディールだということです。従来型の土木建設ではなくて、私たちの文化を残すための公共事業、つまり新しいニューディールに変えなきゃいけない。」ここには新しい「公」の論理がある。ケインズ式のモダンな経済学の終焉を唱え、すべてを民営化し自由競争へ向かおうとする昨今の潮流に対抗する田中知事と、その使命を担った團さんにエールを送りたい。

この論考に関するツイート
https://twitter.com/DarkKnight_jp/status/1585914992309993472

✽難波和彦氏の

軽井沢の良質な別荘環境は日本の貴重な財産
=「マンション軽井沢メソッド宣言」=
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/mansion.htm

英文
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/mansio_e.htm

軽井沢の美しく豊かな自然・景観は日本の貴重な財産
~軽井沢まちなみメソッド宣言~
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/method2.htm

英文
http://yassy.system-a.org/keiei/seisakut/model/mansio_e2.htm

不信任決議を受けての出直し知事選で掲げた「5直し」と「8つの宣言」、
2001年2月20日の『「脱ダム」宣言』、同年5月15日の『「脱・記者クラブ」宣言』
(その際の長野県政記者クラブと遣り取りの文字起こしを含む)もご覧頂けます
http://yassy.system-a.org/hisyo/governor/declaration.htm

「朝日新聞」が今よりも「分析知」と「直感知」を持ち合わせていた2003年3月30日に当時の東商ホール(千代田区丸の内)

で行ったシンポジウム「脱デフレ-新たな社会・経済システムを求めて」に出席した際のYa‘ssy発言部分を紹介します。

2022年10月28日に結婚12年を迎えた妻の惠が当時、「東京ペログリ日記」にW嬢として登場していた彼女と一週間、

フランスのストラスブール、ドイツのトリーア、イタリアのミラノを自費で訪れた後、成田で乗り継ぎ50分のミニマム・コネクションで中華航空の台北行きに乗り換え、

3泊4日で李登輝氏、陳水篇氏らとの個別会談、太平洋そごう(現在の遠東そごう)での長野県物産フェアを済ませて帰国の翌日に参加。

現在の@asahicomと異なり太っ腹にも全文無料閲覧可能。

 

パネルディスカッション登壇者
http://www.asahi.com/sympo/deflation/

 

田中康夫冒頭発言 「生活や産業の構造変え、高品質社会を」
http://www.asahi.com/sympo/deflation/07.html

田中康夫 個性化を認めた脱物質主義社会を
http://www.asahi.com/sympo/deflation/08.html

田中康夫 知的産業の集積でソフトテイクオフを
http://www.asahi.com/sympo/deflation/09.html

田中康夫 リーダーが社会を本質の部分から変える
http://www.asahi.com/sympo/deflation/10.html

田中康夫 「改革」の裏にあるもの認識する必要
http://www.asahi.com/sympo/deflation/10.html

田中康夫 知識・頭脳産業へ金回せば好転する
http://www.asahi.com/sympo/deflation/11.html

田中康夫 手続きより結果としての民主主義の成果を
http://www.asahi.com/sympo/deflation/12.html

Ya‘ssy発言の前に丹羽宇一郎氏(当時伊藤忠商事社長)が投げ掛けた問題提起
http://www.asahi.com/sympo/deflation/06.html

「J・F・Kの呪縛」と題して「Kyodo Weekly」2009年12月21日号に寄稿した拙稿
http://www.nippon-dream.com/archives/4_its.htm#30

効果ありやなしやと○×式の一刀両断に人々が快哉を叫んだ事業仕分けは早晩、リバウンドに見舞われるでしょう。一例を挙げれば、「自治体に財源を移し、自治体が下水道事業の必要性を判断できる環境を整えるぺき」と、行政刷新会議は国土交通省の下水道事業を判定しました。
が、総人口の18%に上る、山あり谷ありな中山間地を主体とする約750万世帯の汚水処理未整備地区へ下水道を敷設するには47兆円も要するのに対し、環境省が所管する合併処理浄化槽の個別地域設置へと事業そのものを転換したなら、わずか6兆円。現行の下水道新設予算の3年分で完遂可能。かくなる視点が欠落しているのです。

問われている「生活が第一」「Kyodo Weekly」11月16日号
http://www.nippon-dream.com/archives/4_its.htm#29

堂々と公共事業Uターンを 「Kyodo Weekly」2008年7月28日号
http://www.nippon-dream.com/archives/4_its.htm#29

嗤っちゃうよタクシー会社格付け 「日刊ゲンダイ」2010年2月25日
http://www.nippon-dream.com/archives/4_kikai2010.htm#212

 

1929年の米国株式市場の大暴落に端を発する、30年代の世界恐慌のさなかに完成した「ケインズ経済学」。

公共投資をすれば民間投資と個人消費が刺激され、政府の支出額以上に国民所得が増加するという乗数理論を提唱。

政府の市場介入の必要性を説き、やや大きな政府を志向するケインズ経済学は「中道のリベラリズム」

https://diamond.jp/articles/-/109385?page=4

 

✽小生のツイートに対する多くの方々の鋭い内容のツイート
https://twitter.com/loveyassy/status/1582884812154470400

@RINN0222さんから以下の具体的な提案DMを拝受

>横浜も大阪を他人事とは思えないレベルでセンターラインや横断歩道のゼブラ柄が消えてる箇所が多々ありますね >仲本工事さんの事故もセンターラインをラバーポールで仕切るなど歩行者の横断歩道禁止対策方法はあるはずです
https://twitter.com/Mizuki_Hodaka/status/1582904592307998721

事故のあった洪福寺の交差点でよく右折します。すぐに赤になるので右折の信号ばかり見て、飛び出して来る歩行者には気づきません。 ちなみにここより交通量の少ない西平沼交差点では鉄柵で、歩行者は交差点の手前で横断出来ないようになっています。
https://twitter.com/sunoluno_3588a/status/1582882242870710272

現場の市道を含め #横浜市 の道路特定事業計画では市内の生活道路の整備方針目標を平成32年度(=2020年度)としてたが、当時の #横浜市長 だった林文子はカジノ誘致を最優先とし、現市長の #山中竹春 も上瀬谷の花博招致を優先してる。これでも住みたい街No.1と言えるのか?
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/doro/anzenshisetsu/yasashii/doro-jigyo/bfree.html

 

https://twitter.com/kuroyasu17/status/1583550021223735296
仲本工事さんはこんな道路で事故にあったのか この交通量で、センターラインも横断歩道も不明瞭なままなら、事故を起こせと言っているようなもの。 昔からファンだっただけに無念。

 

https://twitter.com/pinchrunner358/status/1583245039047970816

あそこの道路は本当に危ない。そこを横断するのも良く無いが今まであそこで何人怪我、死亡したことか、横浜市も対策を考えた方が良いよ

 

https://twitter.com/58wDjJ0m3pm0Nti/status/1582991295236444160

写真付き

#横浜市 は何処もこんな感じだよね。 被害者も加害者も横浜市を訴えてもいいレベルだよ
https://twitter.com/yamugara/status/1583001993949646848

私も動画を見て白線が消えかかっているのが気になりました。話題の大阪だけでなくて横浜もそうなのですね

全国20の政令指定都市で唯一、中学校に給食がない横浜市の謎を扱った「田中康夫の新ニッポン論」Vol.107「絵に描いた餅」
https://tanakayasuo.me/archives/33872

「田中康夫の新ニッポン論」Vol.105「中抜きビジネス」
https://tanakayasuo.me/archives/32803

「VERDAD」連載「田中康夫の新ニッポン論」バックナンバー
https://tanakayasuo.me/archives/category/verdad

浅田彰氏との「憂国呆談」バックナンバー
https://tanakayasuo.me/archives/category/sotokoto

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