VERDAD「田中康夫の新ニッポン論」　Vol.113「お前は既に負けている」

1979年1月1日に発効した「アメリカ合衆国と中華人民共和国との間の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」。「アメリカ合衆国は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。この範囲内で、合衆国の人民は、台湾の人民と文化、商業その他の非公式な関係を維持する」と明言しています。

「国際的軍事衝突の危険を減少させることを願望する」「双方は、」「米中関係の正常化は、中国及びアメリカの人民の利益に合致するのみならず、アジアと世界の平和に貢献するものと信ずる」旨の共同コミュニケ各項も「文化交流を主とした新しい日台関係の構築」を目的に設立の日本李登輝友の会HPで確認可能。

更には「先制核不使用宣言」ならぬ「核容認」の「広島ビジョン」を被爆地で発した「先進7か国首脳会議」も「『一つの中国』政策を含め、台湾に対するG7の基本的立場に変更はない」と「首脳宣言」で改めて言明。

「台湾有事」を殊更に喧伝（けんでん）する米国は、「一つの中国」の「唯一の合法政府」は中華人民共和国だと「法の支配に基づく国際秩序を守り抜く」G7頭領（とうりょう）として認め続ける自家撞着（じかどうちゃく）に陥っています。

1971年10月25日に国際連合総会で可決の、日本では「アルバニア決議」で知られる2758決議。採決に先駆け、安全保障理事会常任理事国のみを中華民国側が辞退し、国連での議席は守る「二重代表制決議案」を米国は提出するも表決に付されず、賛成76・反対35・棄権17・欠席3で「中華人民共和国政府の代表権回復、中華民国政府の追放」が確定。

「賛成多数」も「法の支配に基づくデュープロセス」に他ならず。Vol.112「しなやかな是々非々」で、中国＆台湾「両地域」に精通する外務省の垂（たるみ）秀夫・在中国大使が「『台湾有事』は起きない」と看破の講演を再録した所以（ゆえん）。

1953年イラン、1973年チリ、1983年グレナダ、更にはバラク・オバマが告解（こっかい）した2014年ウクライナ等々、「政権転覆」常習犯の米国が、イラク＆アフガニスタン「体制転覆」戦争の失敗から一向に学ばず「台湾有事」も切望するなら、「共同コミュニケ」を是認するや否や、その表明こそ「法の支配に基づく」政治的妥当性（ポリティカル・コレクトネス）の第一歩です。

「同じ考えの国だけが同衾（どうきん）するG7サミットは自慰行為（ひとりよがり）」。マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相は5月24日、日本外国特派員協会FCCJで喝破（かっぱ）。核戦争回避の御題目に実効性を齎（もたら）したいならロシア、中国、北朝鮮、パキスタン、イスラエル等「核保有国」と非核保有国も含めて核兵器廃絶の具体的手段を議論すべきだと。

G20議長国を務め、日米豪印クアッド、中国・ロシア主導の上海協力機構SCOにも加盟するインドのナレンドラ・モディ首相。中国の習近平国家主席。文字通り「グローバルサウス」を牽引するブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領。更には再選されたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領。端倪（たんげい）すべからざるインドネシアのジョコ・ウィドド大統領。

「戦争・紛争こそ最大の公共事業」と嘯（うそぶ）く米国が頭領のG7「北風排除外交」。「同調圧力」を受け流す戦略的自律のインドと「韜光養晦（とうこうようかい）」中国が企てる地球儀俯瞰「太陽融和外交」。彼我（ひが）の違いは明々白々です。

「半導体の勝者」台湾との交易を巧みにやれば良いのに居丈高に中国に喧嘩を売り、米国内のみならず国外をも「分断社会」化するジョー・バイデン。阿諛追従（あゆついしょう）・曲学阿世（きょくがくあせい）な黄昏（たそがれ）ニッポン。『北斗の拳』ケンシロウの至言「お前はもう死んでいる」を援用すれば「お前は既に負けている」のよ。